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「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害

集中力低下、うつ、肥満などデメリットは深刻

 「スマホ脳」と聞いてドキッとした人は多いのではないか。多くの人が長時間利用している自覚があるうえ、「何となく 良くない」ことを感じているためではないだろうか。スマホの長時間利用には確かに弊害がある。今回は、長時間利用で起きる3つの副作用と対策までを解説していく。

リスクその1:集中力や能力の低下

 「スマホを持たせたら、YouTubeにはまってしまって。やめろと言ってもやめないし、休みの日は一日中見ている。宿題も後回しでまったく勉強しないし、学校についていけるか心配」と、小学生の子どもを持つ40代女性は眉をひそめる。

仙台市が令和元年に小学3〜4年生14465名を対象に行った調査によると、小学3〜4年生のスマホ保有率は63.3%に及ぶ。

スマホを持っていない、もしくは持っているがまったく使わない、使用を1日1時間未満に抑えている子どもたちの多くは、平均点より高い成績を収めた

 一方、1時間以上使用している子どもたちの成績は、平均点より低い傾向が見られた。「1時間以上使用している子どもが勉強していないとか、睡眠時間が足りていないだけでは」と考えたくなるが、1時間以上使用している子どもは長時間勉強して睡眠時間を確保していても、やはり平均点より低い傾向が見られたという

 それまで小学5年生〜中学3年生を対象として同様の調査を行った結果よりも、小学3〜4年生を対象とした今回の調査では、この傾向は顕著だったという。少なくとも小学校低・中学年において、長時間のスマホ使用は学力に悪影響を及ぼすと言えそうだ。

では、なぜスマホの長時間利用は成績低下につながるのだろうか。

「勉強すると自室にこもったはずが、実はまったく勉強をしていなかった。スマホを自室に持ち込んだせいで、SNSのやり取りをしたりで忙しく、まったく集中できていなかったようだ。おかげで成績がガタ落ちで、スマホを取り上げることになった」

ある中学生の保護者に聞いた話だが、これは珍しいことではない。

「ゲーム依存」は、2018年にWHOによって病理と認定された。ゲーム依存症患者は、アルコール中毒、ギャンブル中毒患者と脳の状態が酷似した状態となっている。また、SNSにおける「いいね」は、つくかどうかわからないため、ついた時にはドーパミンが放出され、中毒性の高さが指摘されている。

ゲームやSNSだけでなく、スマホの存在自体で集中力が削がれることもわかっている。米テキサス大学の心理学者エイドリアン・ウォード氏は、800人の被験者に対して問題を解かせる実験を行っている。参加者はスマホを机の上に下向きに置くか、ポケットやバッグの中に置くか、別の部屋に置くように無作為に指示された。そのうえで、数学の問題を解いたり、無作為な文字列を記憶させたり、複数の画像からパターンを見いださせたりさせた。

その結果、別の部屋に置いた者は、机の上に置いた者よりずっと高い点数となり、ポケットやバッグに入れた者よりもわずかに高い点数となった。スマホがオン・オフどちらであろうと関係なく、途中で通知があったわけでもない。つまり、スマホが目の前にあるだけで気が散り、集中力や認知能力が下がるということを意味しているのだ。

 スマホがあることで、われわれは認知能力に統計的に有意なマイナスの影響を受ける。それは睡眠不足と同程度になるという。先に紹介したように子どもの成績低下などにつながるだけでなく、大人も仕事の集中力や能力低下につながる可能性が高い

リスクその2:視力低下

 「子どもの視力が一気に下がってしまい、眼鏡をかけることになりそう。最近スマホばかり見ていたからかと後悔している」

小学生の子どもを持つある30代主婦は、子どもの視力が低下したことを気に病む。

令和元年度学校保健統計(令和2年3月)によると、裸眼視力1.0 未満の児童生徒は、小学校、中学校、高等学校で過去最多となっており、子どもたちの視力の低下傾向は続いている

ロート製薬の「コロナ禍における子どもの目の調査」(2020年10月)によると、新型コロナウイルス感染症の流行前の2020年1月頃と比較し、視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じるとの回答は、約5人に一人(18.6%)に上った。

小学生以上の子どもを持つ方に限ると、約4人に一人(24.4%)が視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じると回答している。

 さらに、2020年1月頃と比較し、「動画配信サービス等を見る時間が増えた(31.4%)」、「家にいる時間が増えた(30.1%)」など、デジタル機器接触時間が長くなったという回答は55.2%に上る。なお学年が上がるにつれこの傾向は顕著になり、小学生以上の子どもを持つ人は60.8%が長くなったと回答している。

デジタル機器接触時間の長さと視力低下への感じ方には、相関関係があると考えられるのだ。

近視は、「近業」と呼ばれる30センチ以内の近い距離のものを見る時間が長くなると進行すると言われる。つまり、スマホやゲームなどのデジタル機器の利用が長すぎることは影響すると考えられる。

対策として、米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルールだ。意識して遠くを見る習慣づけをすることで、視力低下の促進が防げる可能性があるという

リスクその3:睡眠障害やうつなど心身の不調

 スマホのブルーライトは、目に刺激が強く、眼精疲労や頭痛などの症状を引き起こすと言われている。長時間のパソコン作業などによって目が疲れる原因ともなっている。

ブルーライトは太陽光にも含まれ、メラトニン分泌を大幅に抑えるものだ。夜にこの光を浴びるとメラトニンが十分に分泌されず、睡眠障害に陥ることがわかっている。睡眠の質が落ちると、食欲をつかさどるホルモンの分泌に影響を及ぼし、肥満を促進したり、生活習慣病のリスクが高まるという指摘もある。

医学誌『JAMA Pediatrics』に掲載された、カナダの高校生を対象とした「スクリーンタイムと青少年のうつの関連性」(2019年7月)によると、SNS・テレビ・ネットサーフィンを問わず、スクリーンタイムが1時間伸びるごとに、孤独感、寂しさ、絶望感といったうつ状態のレベルが高まるという。

つまり、スマホの長時間利用が、睡眠障害や肥満、生活習慣病、うつなどの心身の不調につながる可能性があるというわけだ。

 言うまでもなく、スマホは非常に便利な端末であり、利用しないということは現実的ではない。これまで多くの医師に取材してきたが、「スマホやタブレットを使ってはいけない」という医師はいなかった。どの医師も「長時間利用しすぎると悪影響が出る可能性があるが、時間を制限して利用するなら問題はない」と言っていた。

 そもそもスマホは、長く頻繁に利用したくなる誘惑にあふれている。SNSやゲームアプリには、通知、人間関係、時間での体力回復、毎日のログインボーナスなど、頻繁に利用したくなるような、利用を習慣化するような仕組みが多数ある。そのようなアプリにとっては長く頻繁に利用してもらうことがビジネスにつながるためだ。

長時間利用を抑える「3つの対策法」

 ご紹介したような副作用を考えると、スマホの利用時間はコントロールするべきだろう。

 スマホの利用時間をコントロールするためには、iOS端末ならスクリーンタイム機能、Android端末ならデジタルウェルビーイング機能を使えば可能である。自分の利用時間の長さを確認し、アプリごとや一日の利用時間、利用しない時間帯などを設定するとコントロールしやすくなるはずだ。

 そのほか、そもそも使うアプリを整理したり、通知をオフにしたり、バイブレーションをオフにすることでも、利用を抑えられるだろう。目覚まし時計代わりに使う人は多いので、目覚まし時計を手に入れて枕元にスマホを置かないようにするというのも良い方法だ。

 子どもの場合、スマホ以外に夢中になれること、やることがあるとスマホから離れられるはずだ。習い事や部活動、塾など、場を変えたり夢中になれることがあるといい。保護者がスマホを預かったり、スマホを置いて外出する機会を設けたりしてもいいだろう。この機会に利用時間をうまくコントロールし、使いこなしていただければ幸いだ。

                      <高橋 暁子:成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト >

 

 

 

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スマホのやり過ぎによる脳への弊害

 生活に欠かせないスマホが脳科学の世界で物議を醸している。スマホに依存すると30~50代の働き盛りでも、もの忘れが激しくなり判断力や意欲も低下するというのだ。患者の脳では前頭葉の血流が減少。スマホから文字や映像などの膨大な情報が絶えず流入し続け、情報処理が追いつかなくなると見られている。「スマホによる脳過労」「オーバーフロー脳」などと呼ぶ脳神経外科医も現れ、脳の異常は一時的なのか、認知症の初期症状なのか、議論が始まっている。また東北大学は、スマホの使用時間が長い子どもの大脳に発達の遅れが見られると発表。一部自治体は子どものスマホ規制に動き出した。こうしたなか注目されるのが「デジタル・デトックス」の試みだ。リゾート会社はスマホを手放して自然を無心で味わう滞在を提案。スマホメーカーも一定時間を超えるとアプリを使用できなくする機能を開発した。明らかになりつつあるスマホのリスクと対策。その最前線を伝える。
                    <NHKクローズアップ現代より>

“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!?
 最近、スマホの使いすぎが原因で、脳に異常をきたす人が増えているという指摘が、医師や研究者の間で相次いでいます。スマホによる「認知機能の低下」、「脳過労」とも呼ばれています。
スマホが原因で脳過労に陥った人の脳画像です。青くなっているのは、血流が減って機能が鈍っている部分。正常な時と比べると、明らかに機能の低下が広がっています。
岐阜県の、もの忘れ外来です。以前は高齢の患者がほとんどでしたが、5年ほど前から異変が起きたといいます。
<脳神経外科 奥村歩医師>
「スマホが息抜きだと考えているかもしれないが、息抜きが息抜きになっていなくて、そのスマホが“脳過労”を憎悪させる最大の原因になっている方が非常に多い。」

“スマホ脳過労” 子どもも学力低下!?
 知らず知らずのうちに脳を脅かすというスマホ。子どもの場合、より深刻な影響を示唆するデータがあります。
仙台市の中学生の数学の学力と、スマホの利用時間、その関係を調査した結果です。
 最も点数が高いのは、スマホを「全く使わない」、もしくは「1時間未満」という生徒たちなんです。スマホを使う時間が長ければ長いほど、平均点が下がっていく傾向が見られます。この点数が下がっているのは、勉強していないからではないかと思われるかもしれないのですが、この調査した生徒たちの勉強時間は、ほぼ同じだったんです。


 スマホなどでネットを長時間使う子どもたちの脳を調べると、黄色い部分が目立ちました。脳全体をつなぐ神経線維の集まり、「白質」の発達が遅れている部分だそうです。
<東北大学 川島隆太教授>
「初めてこんなに広範な領域に悪影響が出るものに出会いました。子どもたちの記憶の能力自体にマイナスの影響が出ていると予測されます。極端な話ですけれども、法律によって18歳まではスマートフォンを1時間以上使ってはいけないと、強制的におさえてあげるほうが、未来にとっては幸せであろうと考えます。」




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これほど脳が活性化する方法を見たことがない…脳研究者が驚いた

【「音読」が最も脳を活性化させる】

私はこれまで数百にものぼる実験を行い、脳が活性化する様子を研究してきました。

その中で、最も強く脳が活性化したのが「音読」でした。現在においても、私は音読以上に脳を活性化させる実験結果は見たことがありません。

音読を行うと、脳の神経細胞が一斉に活性化し、脳の血流がどんどん高まって、大脳全体の70パーセント以上が活動しはじめることがわかっています。

 

【言語を読んでいるときに脳内で起こっていること】

言語を読んでいるとき、脳内では何が起こるのでしょうか。

まず、私たちが文章を黙読すると、目にしたものを調べるための「視覚野」がある後頭葉が働きはじめます。次に、目を動かす指令を出す「前頭眼野」が働いて文字を目でとらえ、言葉の意味を理解しようと働く「ウェルニッケ野」が意味をつかもうとします。

そして、「脳全体の司令塔」である前頭前野が働き、読んだ文章を理解し、記憶し、思考するという活動が行われるのです。

このとき面白いことに、聞こえた音を調べる「聴覚野」という脳の部位も働いていることがわかっています。つまり、私たちは文章を黙読しているとき、心の中で声に出して読み、その自分の声を聞いているということです。

 

【1日10~15分の音読で記憶力20%UP】

黙読するだけでも、脳の広範囲が働いていることがわかりますが、これが音読になると、働く範囲がさらに広く、強く活性化することがわかっています。

中でも特に強く反応するのが、「頭の良し悪しを握るカギ」である前頭前野です。

脳全体の血流が高まり、活性化した状態にできるのですから、脳の「準備体操」として音読は最適であるといえるでしょう。実際に、1日10~15分の音読を行うと記憶力が20%アップするという研究もあります。

小さなお子さんが自分で文字を読めるようになると、声に出して絵本を読んでいる姿をよく目にしますね。実は、あれが非常によい前頭前野のトレーニングになっているのです。

 

【読書は脳の構造自体を変化させる】

学童期になったら勉強の前に教科書を音読する。あるいは、ちょっと難しい文章を理解したいときには意識的に声に出して読むことをおすすめします。記憶力や理解力がアップして、学習効果を高めることが期待できます。

とはいえ、なんでもかんでも音読をするのは、あまり現実的ではありません。当然ながら、純粋に読書を楽しむときには静かに黙読するのが通常です。こうした普通の読書であっても、子どもの脳にとてもよい影響のあることが科学的に明らかになっています。

私の研究では、読書習慣がある子どもたちの脳画像や言語発達に関するデータを分析したところ、言語発達や脳の構造に次のような影響を与えることがわかりました。

脳の神経細胞同士をつなぐ神経線維である「弓状束きゅうじょうそく」は、言葉との関係が深いといわれていますが、読書習慣のある子どもは、その構造がよりよく発達していることが確認できたのです。

読書は脳の構造自体を変化させる。その事実に、脳の専門家である私たちでさえも大きな衝撃を受けました。

 

【読書時間が長くなるほど偏差値も高くなる傾向】

また、読書習慣は、子どもの成績を向上させることもわかっています。

次のグラフは、2017年(平成29年)の小学5年生から中学3年生までの子ども約4万人の「平日の1日当たりの読書時間」と「4教科(国語、算数/数学、理科、社会)の平均偏差値」をまとめたものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読書を「まったくしない」が最も低く、そこから、読書時間が長くなるほど偏差値が高くなっている傾向が明らかです。

【「まとまり読み」ができるようになることが大切】

読書習慣のある子どもたちは、小学校中学年から「まとまり読み」ができるようになります。

文字を一文字ずつ追うのではなく、文字を意味のあるまとまりとしてとらえ、効率的かつ、スピーディに読み進めるようになるのです。

この段階に入った子どもは、文章を読むことがまったくストレスになりません。そのため、自分で本をどんどん読み、さらに知識を積み上げていくという、“理想的なループ”に入ります。

 

【1日30分の読書週間は2時間の学習に匹敵】

この4万人の子どもを調査・分析した結果から、さらに次のようなこともわかりました。

・「勉強2時間以上で読書をまったくしない」群の平均偏差値は50.4

・「勉強2時間以上で読書を1日10~30分する」群の平均偏差値は53.6

・「勉強30分~2時間で読書を1日10~30分する」群の平均偏差値は51.3

つまり、同じ勉強時間でも、読書を1日10~30分するだけで偏差値は「3」上がる。さらに、1日2時間以上勉強しても、まったく読書をしていないと、それ以下の勉強時間の子どもより成績が悪くなる……という驚きの結果が出ています。

ここから、子どもには毎日30分程度の読書習慣をつけることが望ましい。すると、2時間の学習に匹敵する成績アップ効果が期待できるといえるのです。

 

【「読む習慣」をつけることが大事】

家庭で読書習慣をつけるためには、少しでも興味を持つ本をたくさん読むとよいでしょう。

幼少期の脳発達にとって重要なのは、「何を読むか」よりも「読む習慣をつけること」です。

もしもヒーローもののテレビシリーズに夢中なら、その関連本からはじめたり、大好きなアニメの原作本を買って読むのもよいでしょう。

好きなジャンルであれば、たとえわからない文字があっても、一生懸命に読もうとします。それを続けていくうちに脳が慣れてきて、小学校中学年ぐらいになると「まとまり読み」ができるようになるはずです。

 

【漫画でも「何も読まないよりはまし」】

ところで、読書に関して「漫画でもよいのでしょうか?」という質問をよく受けます。「何も読まないよりはまし」と、私としては答えています。

漫画を読んでいるときの脳活動も測定したことがありますが、前頭前野は活字の本を読むときほどには活性化していませんでした。それでも、文字が大好きな脳にとっては、漫画の吹き出しの中の文字を読むことで、通常より活性化する反応が見られました。

とりわけ、物語性のある漫画を夢中になって読むのは、脳にとって悪いことではありません。「いろいろな言葉の意味を漫画で覚えた」というのもよくあるケースです。

 

【幼少期は「読み聞かせ」で心が育つ】

幼少期の場合は、家庭での「読み聞かせ」が読書習慣となります。

【本を読む喜び、学ぶ楽しさを身につける】

一方で、「頭の良し悪し」に関わる前頭前野については、読み聞かせをしている間はあまり働いていませんでした。

そう聞いて、少し残念な気持ちになるかもしれません。しかし、それは少々早計というもの。

なぜなら、たくさん読み聞かせをすれば、自然な文脈で言葉を学習し、情操や感情表現を豊かに発達させていくからです。

それだけでなく、本を読む喜び、学ぶ楽しさも身につけていきます。

 

【親子で読み聞かせの役割をチェンジしてみよう】

そうした体験が強力なモチベーションとなって、成長するにしたがって自ら本を読むようになり、「何も言わなくても自分から勉強する子ども」へと成長していくでしょう。

自分で文字を読めるようになったら、ぜひ読み聞かせの役割を親御さんと交代してください。今度は子どもが音読をして、親御さんがそれを聞く側に回るのです。

音読によって子どもの前頭前野が強く活性化し、子どもはさらに「頭のいい子」に成長していくことが期待できます。

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川島 隆太(かわしま・りゅうた)

東北大学加齢医学研究所教授

1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。

<この著者の他の記事> 幼少期の勉強はこれだけやっておけば間違いない…我が子の「脳の力」を最大限に伸ばす「2つの学習習慣」

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千葉県の学区制について

<<学区制度の概要>>
〇全日制の課程・普通科(幕張総合高校と女子高は除く)
 学区内の高校および隣接する学区内の高校への志願は可能。
〇幕張総合高校および女子高、専門学科、総合学科、定時制の課程
 県内全域からの志願は可能。

<<学区とは>>
【第1学区】
千葉市
【第2学区】
市川市・船橋市・松戸市・習志野市・八千代市・浦安市
【第3学区】
野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市
【第4学区】
成田市・佐倉市・四街道市・八街市・印西市・白井市・富里市・酒々井町・栄町
【第5学区】
銚子市・香取市・匝瑳市・旭市・神崎町・東庄町・多古町
【第6学区】
東金市・山武市・大網白里市・九十九里町・横芝光町・芝山町
【第7学区】
茂原市・勝浦市・いすみ市・長柄町・長南町・睦沢町・一宮町・白子町・長生村・大多喜町・御宿町
【第8学区】
館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町
【第9学区】
木更津市・市原市・君津市・富津市・袖ケ浦市

<<志願可能な学区>>
第1学区居住 ⇒ 第1・2・4・6・7・9学区
第2学区居住 ⇒ 第1・2・3・4学区
第3学区居住 ⇒ 第2・3・4学区
第4学区居住 ⇒ 第1・2・3・4・5・6学区
第5学区居住 ⇒ 第4・5・6学区
第6学区居住 ⇒ 第1・4・5・6・7学区
第7学区居住 ⇒ 第1・6・7・8・9学区
第8学区居住 ⇒ 第7・8・9学区
第9学区居住 ⇒ 第1・7・8・9学区
※ただし、千葉女子高校・幕張総合高校・木更津東高校は、全学区から志願が可能。

 

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アドラー心理学による勉強をやる気にさせるこつ

【子供のやる気を育てる方法】

まず、今の成績を把握することが大切です。目標設定のコツは,まず目標となる数値なり点数を決めて,それに向かってどうしたら到達できるようになるかを考えることです。それと同じく重要なのは,今現在の具体的な数値や点数です。

カーナビで目的地へたどり着くためには現在地を知る必要があります。現在地が解らなければルート検索できません。そこでまず現在地を知り,そこからコースを選択します。学習も同じように、現状を知り少しでも上達したところを認めてあげることが大切です。

つまり,できないところに着目するのではなく,できたところに注目してあげるます。このようにして次の目標を設定すれば,子供のやる気を育てます。詳しく説明しましょう。

 

<できたところに着目する>

例えば,勉強。40点しか取れなかった子が,次のテストで43点だったとしましょう。5点しか上がらなかったと考えるのではなく,3点上がったことに着目し,「3点上がったね,お母さん嬉しい」と感謝して喜んであげます。

ポイントは,よくやったと上から目線で褒めるのではなく,感謝して喜びという感情を伝えることです。褒めるという行為は,上の者が下の者に行う行為,そこに上下関係を作り出します。上下関係で子供と接していると,順調な時はいいのですが,上手くいかなかった場合は子供を支配しようとし,意のままに操ろうとします。

そして,意のままにならなければ母親はストレスを溜め,子供に罰を与えようとします。これが賞罰主義です。

世界で初めて児童相談所を設立したアルフレッド・アドラーが提唱するアドラー心理学でも,賞罰主義を批判し褒めることと叱ることを否定しています。

一方,感謝して喜びを伝える行為に上下関係はありません。感謝することは子供の存在を1個の人間として認め,感情を伝えることは子供の心により強く印象づけます。

前述のアドラー心理学でも,他者貢献は人間の本能的な喜びであると定義づけています。この時,親と子供は同列であり同じ時間を歩む仲間なのです。これをアドラー心理学では,共同体意識と呼んでいます。

このような接し方を続ければ,「勉強したら感謝されて,お母さんが喜んだ」と受け取り,子供は勉強を続けようと思えるのではないでしょうか?駄目なところに注目するのではなく、良いところに注目することで子供は勉強しろと言わなくても,自分からやるようになるでしょう。

 

<問題行動>

賞罰主義を否定する根拠にもうひとつあります。成績が上がらないところばかりを責められると,自己肯定感が下がり,自分は勉強ができないと子供が思い込んでしまいます。そう思い込むと,もはや勉強で親の注目を引くことができないため,別の方法で注目を引こうとします。これが,問題行動として表面化します。

外へ向かえば,他人を攻撃したり悪事を繰り返したりする行動へ,内側へ向かえば引きこもりなどになります。なぜ,このような行動になるかというと,親に見捨てられないためなのです。なぜなら,子供は本能的に親に見捨てられたら生きていけないことを知っているからです。ですから,親の注目を集めるために問題行動を起こすわけなのです。

 

<水飲み場までは連れて行ける>

アドラー心理学では,その問題の責任を誰が引き受けるか?で,その問題が誰の課題であるかをハッキリさせます。勉強で言えば,勉強をしなかった責任は子供が引き受けます。その問題に口を出すことは,他人の課題にあれこれ注文を付けること,アドラー心理学では他人の領域に土足で踏み込むといい,全ての人間関係のトラブルはここに起因するとまで言っています。

あたなも,親や他人から自分がすることに対してこうした方がいい」「こうするべきだ」と言われて反発した覚えがあると思います。厳しい言い方かもしれませんが,あなたがもし,子供が勉強しないことに対して口を出したくなった場合は,無意識にこう考えているのではないかと思います。

子供のためといいつつ,「自分がダメな親だと他人から言われないため」ではないでしょうか? いくら,親が望んでも実際に勉強するのは子供であり,親ではありません。この課題の分離をして,前述の通り感謝し,認めてあげれば正しい方向へ進み始めるのではないでしょうか。

馬を水飲み場までは連れて行けるけど,無理矢理水を飲ませることはできないのです。結局は,勉強に興味が持てなければ「やらされている」だけなので,成績は伸びないのです。

 

<まとめ>

今回は子育てを例にとりましたが,あらゆる場面で応用できる考え方だと思います。ストレスを溜めない秘訣は他人の領域に土足で踏み込まず(人を自分のペースで意のままに動かそうとせず),結果を急がないことではないでしょうか。自分の意見や考えを持つことは大切ですが,それを他人に押しつけることは,他人の課題に土足で踏み込むことなのです。

 

<例2>

アドラーは,【嫌われる勇気】等の著書で有名な人物で,彼の提唱するアドラー心理学の中に“目的論”というのがあります。心理学業界ではフロイトという人物もアドラーに並ぶ心理学の巨匠トップ3の一人ですが,フロイトの提唱する“原因論”がアドラーの提唱する“目的論”の一対としてよく用いられます。

 

「頭が良くなりたい!と思っていても,なかなか行動に移せず5時間勉強するつもりが10分もできなかったなんてことも,受験勉強においてはよくあることです。学力が伸びないのには“原因”がありそれ解決すれば頭が良くなるでしょう!」と考えるのがフロイトの原因論です。一方,アドラーの“目的論”は「人は目的ありきで行動する」という考えからきています。つまり,目的を達成するために人は行動を起こすわけです。

頭が良くなりたいけど行動に移せないのは「自分の時間を他のことに使いたいから」かもしれない。周りとの関係性だったり,金銭的な面を考慮してのことだったり,目的は人によってそれぞれ違うでしょう。言ってしまえば,それが自分の本心です。自分の本心を知ることで,その解決策を見つけることができます。

原因論は問題を発見する上で超絶効果を発揮しますが,目的が変わらない限り原因を解決したとしても,問題が解決しないことは多分にあります。

例えば,学力が上がらないのは勉強量が足りない=モチベ不足,自分のモチベーションが湧かないからだとしましょう。では,モチベを上げるために行きたい大学へ行きましょう。モチベを上げて勉強量を増やそう!と。でも実はその子が勉強しない“目的”は「勉強から自分を切り離すことでストレスを抱えないようにしたいから」だったのです。だからいくらモチベを上げても,この目的自体が変わらないので,最終また勉強しなくなったのです。

つまり,勉強自体が楽しくなるよう面白みを混ぜること,且つ学習をもっと効率化して自分の時間を確保することで,この問題は解決するのです。自分の本心に耳を傾けたからこそ見えた問題の根本だったわけです。

 

子どもに勉強させるのって,実は“親のエゴ”かもしれません。勉強しない子供。それを悩むお母さん。どこの家庭にもあるよくある話かと思います。ではこの問題を,アドラー心理学の視点でみてみましょう。

アドラー心理学では,問題を「これは誰の課題か?」という視点で考えていきます。その選択によってもたらされる結果を“最終的に引き受けるのは誰か?”を考えた時。勉強しないという選択によってもたらされる結果を「最終的に引き受けるのは“子供”」ということが見えてきます。親が勉強させたいのは“自分の目的”つまりは,世間体や見栄,支配欲なのかもしれません。子どもはそんな親の目的を察知するからこそ反発すると言われています。

ある国のことわざで,こんなことが言われています。「馬を水辺に連れて言うことはできるが,水を飲ませることはできない」。その通り!子供を机に座らせることはできますが勉強させることはできませんね。

 

アドラー心理学的には,他者の課題に踏み込まないという原則があります。我々教師や親の役割は,勉強させることではなく子どもが勉強したくなるような意識づけや環境整備をすることです。そしてそういうやる気を起こすきっかけを作ってあげることなんだと思っています。

<例3>

2013年に発売された『嫌われる勇気』で一躍有名になったアドラー心理学。今回ご紹介する『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』はそんなアドラー心理学を元に,子育てにおいて親はどうすべきなのかが分かりやすく解説された書籍です。この本の表紙には「叱ってはいけない,ほめてもいけない」というコピーが書かれています。これはいったいどういうことなのでしょうか?「ほめてはいけない」という言葉に疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。そこで本書のポイントをピックアップしてお届けします。早速見ていきましょう。

①   叱られてばかりの子は“スケールの小さな子”になる

子どもは適切な行動をしたときに,親に何も言ってもらえなければ,敢えて叱られることをして親の注目を自分に向けようとします。そして叱られると,しばらくは問題行動を止めますが,それはただ親が怖いだけ。叱られ続けていると,次第に積極的に行動しない,スケールの小さな子どもになってしまいます。

ではどうすればいいか? それは普通に言葉で説明するということ。

大人と子どもは知識や経験の面で同じではありませんが,人間としては対等です。子どもを叱るというのは子どもを対等に見ていない証拠だといいます。子どもだって対人関係において,誰かの下に置かれるのは好みません。こうして親子の関係が悪くなってしまうのです。

 

②   ほめると“ほめられなければ頑張らない子”になる

ではほめることはどうかというと,これも考えものだといいます。

確かにテストで良い成績をとったときなど,子どもはほめられると嬉しいでしょう。でも,「必ずほめられなければいけない」と思うと,ほめられなければ頑張れない子どもになってしまいます。

ゴミが落ちていても,周りにほめてくれるような人がいなければ拾わないというのも同じことです。子どもは良い成績をとれば,それだけで満足しているはず。親が追加支援する必要はないといいます。また成績が悪くて子どもが落ち込んでいたとしても,それは子どもが自力で解決する問題です。親はなぐさめたいと思うかもしれませんが,そうすると,子どもはいつも誰かに声をかけてもらわなければ苦境を乗り切れなくなってしまうのです。他の人が必ず声をかけてくれるとは限らないということは,子どもも知っておくべきなのだといいます。

 

原因なんかどうでも良い!

アドラー心理学というのは,アドラーというオーストリアの精神学者が考案した理論。アドラーはフロイトやユングと並び称されるぐらいの人だそうですが,世間的にはあまり有名ではないようですね。私も知りませんでしたし・・・。

 でも,アドラー心理学は非常に興味深いです。アドラー心理学は簡単に言えばタイトルの通り,「原因なんかどうでも良い!」というようなことを言っています。

何かをやりたかったりやり遂げた時に,私もそうですが,そこに理由や原因を求めることって多いですよね。でも原因があって目的があるのではなく,目的のために原因が使われているというのが,アドラー心理学の考え方のようです。

 

「今宿題やろうと思ってたのに!」と駄々をこねる子供

例を挙げると,子供が宿題や勉強をやりたくなかったとします。そんな時に母親に「宿題やったの?」「勉強しなさい!」と言われ,「今やろうと思ってたのに!」「もうやる気なくなった!」なんてふてくされるのはよくある話ですよね。

これも「母親の言葉」という原因があって宿題をやらなくなったと捉えがちですが,子供は「宿題をやらない」という目的のための原因を探していたんです。そこにちょうど「母親の言葉」という原因があったので,都合よく「宿題をやらない」という目的を達成できたと。母親が何も言わなかったとしても,「テレビを見たいから」「遊びたいから」「疲れてるから」など,テキトーな原因を見つけて,結局は「宿題をやらない」という目的に進んでたんじゃないかということです。

 

理由や原因に左右されず,目的を達成する勇気

このアドラー心理学でどうして耳が痛かったのかというと,もうある程度の想像はつくんじゃないでしょうか。

私もそうですが「疲れてるから」「明日は早いから」「忙しいから」など,原因を見つけて作業をやらないという目的を達成しがちです。原因や理由を見つけるのは簡単なんですよね。後づけでもできますし,何だか周りにはそれっぽく聞こえるので。ただ実際そうだったとしても,「あなたの目的は本当にそこにあるんですか?」ってことです。

作業をやらない目的を達成したところで,結局何も積み上がるものはありません。強いて言えば他人のせいにしたり,言い訳のスキルが上がるかもしれませんけどね。ただ,それを上げてどうするんだってことです。本当に達成したい目的は別にあるなら,原因があっても達成できるように目的を見直したり,目的のために別の原因を作ることが大事なんじゃないでしょうか。結局全ては自分に返ってくることですからね。

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