アドラー心理学による勉強をやる気にさせるこつ

【子供のやる気を育てる方法】

まず、今の成績を把握することが大切です。目標設定のコツは,まず目標となる数値なり点数を決めて,それに向かってどうしたら到達できるようになるかを考えることです。それと同じく重要なのは,今現在の具体的な数値や点数です。

カーナビで目的地へたどり着くためには現在地を知る必要があります。現在地が解らなければルート検索できません。そこでまず現在地を知り,そこからコースを選択します。学習も同じように、現状を知り少しでも上達したところを認めてあげることが大切です。

つまり,できないところに着目するのではなく,できたところに注目してあげるます。このようにして次の目標を設定すれば,子供のやる気を育てます。詳しく説明しましょう。

 

<できたところに着目する>

例えば,勉強。40点しか取れなかった子が,次のテストで43点だったとしましょう。5点しか上がらなかったと考えるのではなく,3点上がったことに着目し,「3点上がったね,お母さん嬉しい」と感謝して喜んであげます。

ポイントは,よくやったと上から目線で褒めるのではなく,感謝して喜びという感情を伝えることです。褒めるという行為は,上の者が下の者に行う行為,そこに上下関係を作り出します。上下関係で子供と接していると,順調な時はいいのですが,上手くいかなかった場合は子供を支配しようとし,意のままに操ろうとします。

そして,意のままにならなければ母親はストレスを溜め,子供に罰を与えようとします。これが賞罰主義です。

世界で初めて児童相談所を設立したアルフレッド・アドラーが提唱するアドラー心理学でも,賞罰主義を批判し褒めることと叱ることを否定しています。

一方,感謝して喜びを伝える行為に上下関係はありません。感謝することは子供の存在を1個の人間として認め,感情を伝えることは子供の心により強く印象づけます。

前述のアドラー心理学でも,他者貢献は人間の本能的な喜びであると定義づけています。この時,親と子供は同列であり同じ時間を歩む仲間なのです。これをアドラー心理学では,共同体意識と呼んでいます。

このような接し方を続ければ,「勉強したら感謝されて,お母さんが喜んだ」と受け取り,子供は勉強を続けようと思えるのではないでしょうか?駄目なところに注目するのではなく、良いところに注目することで子供は勉強しろと言わなくても,自分からやるようになるでしょう。

 

<問題行動>

賞罰主義を否定する根拠にもうひとつあります。成績が上がらないところばかりを責められると,自己肯定感が下がり,自分は勉強ができないと子供が思い込んでしまいます。そう思い込むと,もはや勉強で親の注目を引くことができないため,別の方法で注目を引こうとします。これが,問題行動として表面化します。

外へ向かえば,他人を攻撃したり悪事を繰り返したりする行動へ,内側へ向かえば引きこもりなどになります。なぜ,このような行動になるかというと,親に見捨てられないためなのです。なぜなら,子供は本能的に親に見捨てられたら生きていけないことを知っているからです。ですから,親の注目を集めるために問題行動を起こすわけなのです。

 

<水飲み場までは連れて行ける>

アドラー心理学では,その問題の責任を誰が引き受けるか?で,その問題が誰の課題であるかをハッキリさせます。勉強で言えば,勉強をしなかった責任は子供が引き受けます。その問題に口を出すことは,他人の課題にあれこれ注文を付けること,アドラー心理学では他人の領域に土足で踏み込むといい,全ての人間関係のトラブルはここに起因するとまで言っています。

あたなも,親や他人から自分がすることに対してこうした方がいい」「こうするべきだ」と言われて反発した覚えがあると思います。厳しい言い方かもしれませんが,あなたがもし,子供が勉強しないことに対して口を出したくなった場合は,無意識にこう考えているのではないかと思います。

子供のためといいつつ,「自分がダメな親だと他人から言われないため」ではないでしょうか? いくら,親が望んでも実際に勉強するのは子供であり,親ではありません。この課題の分離をして,前述の通り感謝し,認めてあげれば正しい方向へ進み始めるのではないでしょうか。

馬を水飲み場までは連れて行けるけど,無理矢理水を飲ませることはできないのです。結局は,勉強に興味が持てなければ「やらされている」だけなので,成績は伸びないのです。

 

<まとめ>

今回は子育てを例にとりましたが,あらゆる場面で応用できる考え方だと思います。ストレスを溜めない秘訣は他人の領域に土足で踏み込まず(人を自分のペースで意のままに動かそうとせず),結果を急がないことではないでしょうか。自分の意見や考えを持つことは大切ですが,それを他人に押しつけることは,他人の課題に土足で踏み込むことなのです。

 

<例2>

アドラーは,【嫌われる勇気】等の著書で有名な人物で,彼の提唱するアドラー心理学の中に“目的論”というのがあります。心理学業界ではフロイトという人物もアドラーに並ぶ心理学の巨匠トップ3の一人ですが,フロイトの提唱する“原因論”がアドラーの提唱する“目的論”の一対としてよく用いられます。

 

「頭が良くなりたい!と思っていても,なかなか行動に移せず5時間勉強するつもりが10分もできなかったなんてことも,受験勉強においてはよくあることです。学力が伸びないのには“原因”がありそれ解決すれば頭が良くなるでしょう!」と考えるのがフロイトの原因論です。一方,アドラーの“目的論”は「人は目的ありきで行動する」という考えからきています。つまり,目的を達成するために人は行動を起こすわけです。

頭が良くなりたいけど行動に移せないのは「自分の時間を他のことに使いたいから」かもしれない。周りとの関係性だったり,金銭的な面を考慮してのことだったり,目的は人によってそれぞれ違うでしょう。言ってしまえば,それが自分の本心です。自分の本心を知ることで,その解決策を見つけることができます。

原因論は問題を発見する上で超絶効果を発揮しますが,目的が変わらない限り原因を解決したとしても,問題が解決しないことは多分にあります。

例えば,学力が上がらないのは勉強量が足りない=モチベ不足,自分のモチベーションが湧かないからだとしましょう。では,モチベを上げるために行きたい大学へ行きましょう。モチベを上げて勉強量を増やそう!と。でも実はその子が勉強しない“目的”は「勉強から自分を切り離すことでストレスを抱えないようにしたいから」だったのです。だからいくらモチベを上げても,この目的自体が変わらないので,最終また勉強しなくなったのです。

つまり,勉強自体が楽しくなるよう面白みを混ぜること,且つ学習をもっと効率化して自分の時間を確保することで,この問題は解決するのです。自分の本心に耳を傾けたからこそ見えた問題の根本だったわけです。

 

子どもに勉強させるのって,実は“親のエゴ”かもしれません。勉強しない子供。それを悩むお母さん。どこの家庭にもあるよくある話かと思います。ではこの問題を,アドラー心理学の視点でみてみましょう。

アドラー心理学では,問題を「これは誰の課題か?」という視点で考えていきます。その選択によってもたらされる結果を“最終的に引き受けるのは誰か?”を考えた時。勉強しないという選択によってもたらされる結果を「最終的に引き受けるのは“子供”」ということが見えてきます。親が勉強させたいのは“自分の目的”つまりは,世間体や見栄,支配欲なのかもしれません。子どもはそんな親の目的を察知するからこそ反発すると言われています。

ある国のことわざで,こんなことが言われています。「馬を水辺に連れて言うことはできるが,水を飲ませることはできない」。その通り!子供を机に座らせることはできますが勉強させることはできませんね。

 

アドラー心理学的には,他者の課題に踏み込まないという原則があります。我々教師や親の役割は,勉強させることではなく子どもが勉強したくなるような意識づけや環境整備をすることです。そしてそういうやる気を起こすきっかけを作ってあげることなんだと思っています。

<例3>

2013年に発売された『嫌われる勇気』で一躍有名になったアドラー心理学。今回ご紹介する『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』はそんなアドラー心理学を元に,子育てにおいて親はどうすべきなのかが分かりやすく解説された書籍です。この本の表紙には「叱ってはいけない,ほめてもいけない」というコピーが書かれています。これはいったいどういうことなのでしょうか?「ほめてはいけない」という言葉に疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。そこで本書のポイントをピックアップしてお届けします。早速見ていきましょう。

①   叱られてばかりの子は“スケールの小さな子”になる

子どもは適切な行動をしたときに,親に何も言ってもらえなければ,敢えて叱られることをして親の注目を自分に向けようとします。そして叱られると,しばらくは問題行動を止めますが,それはただ親が怖いだけ。叱られ続けていると,次第に積極的に行動しない,スケールの小さな子どもになってしまいます。

ではどうすればいいか? それは普通に言葉で説明するということ。

大人と子どもは知識や経験の面で同じではありませんが,人間としては対等です。子どもを叱るというのは子どもを対等に見ていない証拠だといいます。子どもだって対人関係において,誰かの下に置かれるのは好みません。こうして親子の関係が悪くなってしまうのです。

 

②   ほめると“ほめられなければ頑張らない子”になる

ではほめることはどうかというと,これも考えものだといいます。

確かにテストで良い成績をとったときなど,子どもはほめられると嬉しいでしょう。でも,「必ずほめられなければいけない」と思うと,ほめられなければ頑張れない子どもになってしまいます。

ゴミが落ちていても,周りにほめてくれるような人がいなければ拾わないというのも同じことです。子どもは良い成績をとれば,それだけで満足しているはず。親が追加支援する必要はないといいます。また成績が悪くて子どもが落ち込んでいたとしても,それは子どもが自力で解決する問題です。親はなぐさめたいと思うかもしれませんが,そうすると,子どもはいつも誰かに声をかけてもらわなければ苦境を乗り切れなくなってしまうのです。他の人が必ず声をかけてくれるとは限らないということは,子どもも知っておくべきなのだといいます。

 

原因なんかどうでも良い!

アドラー心理学というのは,アドラーというオーストリアの精神学者が考案した理論。アドラーはフロイトやユングと並び称されるぐらいの人だそうですが,世間的にはあまり有名ではないようですね。私も知りませんでしたし・・・。

 でも,アドラー心理学は非常に興味深いです。アドラー心理学は簡単に言えばタイトルの通り,「原因なんかどうでも良い!」というようなことを言っています。

何かをやりたかったりやり遂げた時に,私もそうですが,そこに理由や原因を求めることって多いですよね。でも原因があって目的があるのではなく,目的のために原因が使われているというのが,アドラー心理学の考え方のようです。

 

「今宿題やろうと思ってたのに!」と駄々をこねる子供

例を挙げると,子供が宿題や勉強をやりたくなかったとします。そんな時に母親に「宿題やったの?」「勉強しなさい!」と言われ,「今やろうと思ってたのに!」「もうやる気なくなった!」なんてふてくされるのはよくある話ですよね。

これも「母親の言葉」という原因があって宿題をやらなくなったと捉えがちですが,子供は「宿題をやらない」という目的のための原因を探していたんです。そこにちょうど「母親の言葉」という原因があったので,都合よく「宿題をやらない」という目的を達成できたと。母親が何も言わなかったとしても,「テレビを見たいから」「遊びたいから」「疲れてるから」など,テキトーな原因を見つけて,結局は「宿題をやらない」という目的に進んでたんじゃないかということです。

 

理由や原因に左右されず,目的を達成する勇気

このアドラー心理学でどうして耳が痛かったのかというと,もうある程度の想像はつくんじゃないでしょうか。

私もそうですが「疲れてるから」「明日は早いから」「忙しいから」など,原因を見つけて作業をやらないという目的を達成しがちです。原因や理由を見つけるのは簡単なんですよね。後づけでもできますし,何だか周りにはそれっぽく聞こえるので。ただ実際そうだったとしても,「あなたの目的は本当にそこにあるんですか?」ってことです。

作業をやらない目的を達成したところで,結局何も積み上がるものはありません。強いて言えば他人のせいにしたり,言い訳のスキルが上がるかもしれませんけどね。ただ,それを上げてどうするんだってことです。本当に達成したい目的は別にあるなら,原因があっても達成できるように目的を見直したり,目的のために別の原因を作ることが大事なんじゃないでしょうか。結局全ては自分に返ってくることですからね。