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「スマホの見すぎ」が招く世にも恐ろしい3大弊害

集中力低下、うつ、肥満などデメリットは深刻

 「スマホ脳」と聞いてドキッとした人は多いのではないか。多くの人が長時間利用している自覚があるうえ、「何となく 良くない」ことを感じているためではないだろうか。スマホの長時間利用には確かに弊害がある。今回は、長時間利用で起きる3つの副作用と対策までを解説していく。

リスクその1:集中力や能力の低下

 「スマホを持たせたら、YouTubeにはまってしまって。やめろと言ってもやめないし、休みの日は一日中見ている。宿題も後回しでまったく勉強しないし、学校についていけるか心配」と、小学生の子どもを持つ40代女性は眉をひそめる。

仙台市が令和元年に小学3〜4年生14465名を対象に行った調査によると、小学3〜4年生のスマホ保有率は63.3%に及ぶ。

スマホを持っていない、もしくは持っているがまったく使わない、使用を1日1時間未満に抑えている子どもたちの多くは、平均点より高い成績を収めた

 一方、1時間以上使用している子どもたちの成績は、平均点より低い傾向が見られた。「1時間以上使用している子どもが勉強していないとか、睡眠時間が足りていないだけでは」と考えたくなるが、1時間以上使用している子どもは長時間勉強して睡眠時間を確保していても、やはり平均点より低い傾向が見られたという

 それまで小学5年生〜中学3年生を対象として同様の調査を行った結果よりも、小学3〜4年生を対象とした今回の調査では、この傾向は顕著だったという。少なくとも小学校低・中学年において、長時間のスマホ使用は学力に悪影響を及ぼすと言えそうだ。

では、なぜスマホの長時間利用は成績低下につながるのだろうか。

「勉強すると自室にこもったはずが、実はまったく勉強をしていなかった。スマホを自室に持ち込んだせいで、SNSのやり取りをしたりで忙しく、まったく集中できていなかったようだ。おかげで成績がガタ落ちで、スマホを取り上げることになった」

ある中学生の保護者に聞いた話だが、これは珍しいことではない。

「ゲーム依存」は、2018年にWHOによって病理と認定された。ゲーム依存症患者は、アルコール中毒、ギャンブル中毒患者と脳の状態が酷似した状態となっている。また、SNSにおける「いいね」は、つくかどうかわからないため、ついた時にはドーパミンが放出され、中毒性の高さが指摘されている。

ゲームやSNSだけでなく、スマホの存在自体で集中力が削がれることもわかっている。米テキサス大学の心理学者エイドリアン・ウォード氏は、800人の被験者に対して問題を解かせる実験を行っている。参加者はスマホを机の上に下向きに置くか、ポケットやバッグの中に置くか、別の部屋に置くように無作為に指示された。そのうえで、数学の問題を解いたり、無作為な文字列を記憶させたり、複数の画像からパターンを見いださせたりさせた。

その結果、別の部屋に置いた者は、机の上に置いた者よりずっと高い点数となり、ポケットやバッグに入れた者よりもわずかに高い点数となった。スマホがオン・オフどちらであろうと関係なく、途中で通知があったわけでもない。つまり、スマホが目の前にあるだけで気が散り、集中力や認知能力が下がるということを意味しているのだ。

 スマホがあることで、われわれは認知能力に統計的に有意なマイナスの影響を受ける。それは睡眠不足と同程度になるという。先に紹介したように子どもの成績低下などにつながるだけでなく、大人も仕事の集中力や能力低下につながる可能性が高い

リスクその2:視力低下

 「子どもの視力が一気に下がってしまい、眼鏡をかけることになりそう。最近スマホばかり見ていたからかと後悔している」

小学生の子どもを持つある30代主婦は、子どもの視力が低下したことを気に病む。

令和元年度学校保健統計(令和2年3月)によると、裸眼視力1.0 未満の児童生徒は、小学校、中学校、高等学校で過去最多となっており、子どもたちの視力の低下傾向は続いている

ロート製薬の「コロナ禍における子どもの目の調査」(2020年10月)によると、新型コロナウイルス感染症の流行前の2020年1月頃と比較し、視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じるとの回答は、約5人に一人(18.6%)に上った。

小学生以上の子どもを持つ方に限ると、約4人に一人(24.4%)が視力が悪くなっていると診断を受けたり、感じると回答している。

 さらに、2020年1月頃と比較し、「動画配信サービス等を見る時間が増えた(31.4%)」、「家にいる時間が増えた(30.1%)」など、デジタル機器接触時間が長くなったという回答は55.2%に上る。なお学年が上がるにつれこの傾向は顕著になり、小学生以上の子どもを持つ人は60.8%が長くなったと回答している。

デジタル機器接触時間の長さと視力低下への感じ方には、相関関係があると考えられるのだ。

近視は、「近業」と呼ばれる30センチ以内の近い距離のものを見る時間が長くなると進行すると言われる。つまり、スマホやゲームなどのデジタル機器の利用が長すぎることは影響すると考えられる。

対策として、米眼科学会は「20-20-20」ルールを推奨している。20分間継続して近くを見たあとは、20フィート、つまりおよそ6メートル以上離れたものを20秒間眺めるというルールだ。意識して遠くを見る習慣づけをすることで、視力低下の促進が防げる可能性があるという

リスクその3:睡眠障害やうつなど心身の不調

 スマホのブルーライトは、目に刺激が強く、眼精疲労や頭痛などの症状を引き起こすと言われている。長時間のパソコン作業などによって目が疲れる原因ともなっている。

ブルーライトは太陽光にも含まれ、メラトニン分泌を大幅に抑えるものだ。夜にこの光を浴びるとメラトニンが十分に分泌されず、睡眠障害に陥ることがわかっている。睡眠の質が落ちると、食欲をつかさどるホルモンの分泌に影響を及ぼし、肥満を促進したり、生活習慣病のリスクが高まるという指摘もある。

医学誌『JAMA Pediatrics』に掲載された、カナダの高校生を対象とした「スクリーンタイムと青少年のうつの関連性」(2019年7月)によると、SNS・テレビ・ネットサーフィンを問わず、スクリーンタイムが1時間伸びるごとに、孤独感、寂しさ、絶望感といったうつ状態のレベルが高まるという。

つまり、スマホの長時間利用が、睡眠障害や肥満、生活習慣病、うつなどの心身の不調につながる可能性があるというわけだ。

 言うまでもなく、スマホは非常に便利な端末であり、利用しないということは現実的ではない。これまで多くの医師に取材してきたが、「スマホやタブレットを使ってはいけない」という医師はいなかった。どの医師も「長時間利用しすぎると悪影響が出る可能性があるが、時間を制限して利用するなら問題はない」と言っていた。

 そもそもスマホは、長く頻繁に利用したくなる誘惑にあふれている。SNSやゲームアプリには、通知、人間関係、時間での体力回復、毎日のログインボーナスなど、頻繁に利用したくなるような、利用を習慣化するような仕組みが多数ある。そのようなアプリにとっては長く頻繁に利用してもらうことがビジネスにつながるためだ。

長時間利用を抑える「3つの対策法」

 ご紹介したような副作用を考えると、スマホの利用時間はコントロールするべきだろう。

 スマホの利用時間をコントロールするためには、iOS端末ならスクリーンタイム機能、Android端末ならデジタルウェルビーイング機能を使えば可能である。自分の利用時間の長さを確認し、アプリごとや一日の利用時間、利用しない時間帯などを設定するとコントロールしやすくなるはずだ。

 そのほか、そもそも使うアプリを整理したり、通知をオフにしたり、バイブレーションをオフにすることでも、利用を抑えられるだろう。目覚まし時計代わりに使う人は多いので、目覚まし時計を手に入れて枕元にスマホを置かないようにするというのも良い方法だ。

 子どもの場合、スマホ以外に夢中になれること、やることがあるとスマホから離れられるはずだ。習い事や部活動、塾など、場を変えたり夢中になれることがあるといい。保護者がスマホを預かったり、スマホを置いて外出する機会を設けたりしてもいいだろう。この機会に利用時間をうまくコントロールし、使いこなしていただければ幸いだ。

                      <高橋 暁子:成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト >

 

 

 

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